大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和50年(特わ)165号 判決 1975年8月29日

本店所在地

東京都台東区元浅草一丁目二一番六号

株式会社津山製作所

(右代表者代表取締役津山栄次郎)

本籍

東京都台東区元浅草一丁目一三九番地

住居

同 都同 区元浅草一丁目二一番六号

会社役員

津山栄次郎

明治四三年一月一〇日生

本籍

東京都台東区元浅草一丁目一三九番地

住居

同 都同 区元浅草一丁目二一番六号

会社役員

津山昇

昭和一一年八月二四日生

右三名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官神宮寿雄、弁護人仁科哲、同間辺大午出席のうえ、審理し次のとおり判決する。

主文

被告法人株式会社津山製作所を罰金一、〇〇〇万円に、被告人津山栄次郎、同津山昇をいずれも懲役八月に各処する。被告人津山栄次郎、同津山昇に対し、いずれもこの裁判の確定した日から二年間右各刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告法人株式会社津山製作所(以下被告会社という)は、東京都台東区元浅草一丁目二一番六号に本店を置き、和洋家具漆器の製造販売を目的とする資本金一、〇〇〇万円の株式会社であり、被告人津山栄次郎は同会社の代表取締役としてその業務全般を統括しており、同津山昇は同会社の専務取締役として同会社の経営に従事しているものであるが、被告人らは共謀のうえ被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外して簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和四六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五、一二一万九、三四一円あつたのにかかわらず、昭和四七年二月二九日、東京都台東区蔵前二丁目八番一二号所在の所轄浅草税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七六二万〇、五八六円で、これに対する法人税額が二五三万七、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度の正規の法人税額一、八五六万〇、四〇〇円と右申告税額との差額一、六〇二万二、六〇〇円を免れ(修正損益計算書および税額計算書は別紙(一)(三)のとおり)

第二  昭和四七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八、〇五七万〇、七六八円あつたのにかかわらず、昭和四八年二月二八日前記所轄浅草税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八八五万六、五七三円で、これに対する法人税額が二九九万二、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度の正規の法人税額二、九三四万六、九〇〇円と右申告税額との差額二、六三五万四、九〇〇円を免れ(修正損益計算書および税額計算書は別紙(二)(三)のとおり)

たものである。

(証拠の標目)

判示全般の事実につき

一、被告人津山栄次郎、同津山昇の各検察官に対する供述調書

一、吉田昌弘の検察官に対する供述調書

一、東京法務局登記官斉藤政司作成の登記簿謄本

一、押収してある法人税確定申告書二綴(昭和五〇年押第一、一一九号の4、5)、商品棚卸表二袋(前同押号の1)

判事第一、第二の事実につき

一、吉田昌弘作成の昭和四九年二月二五日付上申書(受取手形による売上除外について)および大蔵事務官作成の売上除外額(受取手形)調査書と題する書面(別紙(一)(二)の各<1>のうち受取手形の引抜による売上除外額につき)

一、吉田昌弘作成の昭和四九年二月二五日付上申書(ショールームの簿外売上について)および大蔵事務官作成のショールーム簿外売上調査書と題する書面(別紙(一)(二)の各<1>のうちショールーム現金売の売上除外額につき)

一、吉田昌弘作成の昭和四九年三月一四日付上申書(大蔵払等の売上除外について)および大蔵事務官作成の売上除外(大蔵払等)調査書と題する書面(別紙(一)(二)の各<1>のうち大蔵払等の売上除外額につき)

一、吉田昌弘作成の昭和四九年三月一四日付上申書(期末売掛分の売上除外額について)および大蔵事務官作成の売上除外額(掛売分)調査書と題する書面(別紙(一)(二)の各<1>のうち掛売分の期末除外額につき)

一、吉田昌弘作成の昭和四九年三月九日付上申書(当社の架空仕入および架空経費の計上について)および大蔵事務官作成の架空仕入および経費調査書と題する書面(別紙(一)の<2><4><5><9><29>別紙(二)の<2><14><29>の事実につき)

一、大蔵事務官作成の棚卸高調査書と題する書面(別紙(一)(二)の各<6><7>の事実につき)

一、吉田昌弘作成の上申書(当社の簿外給与について)および大蔵事務官作成の貸付金調査書と題する書面(別紙(一)(二)の<8>の事実につき)

一、吉田昌弘作成の上申書(当社の簿外経費について)(別紙(一)(二)の<29>のうち簿外支払手数料額につき)

一、北陸銀行上野支店作成の証明書、被告人津山栄次郎、同津山昇作成の上申書(株式会社津山製作所に帰属する預金について)および大蔵事務官作成の貸付金調査書と題する書面(別紙(一)の<32>、別紙(二)の<31>の事実につき)

一、大蔵事務官作成の事業税調査書と題する書面(別紙(一)の<46>の事実につき)

一、大蔵事務官作成の交際費調査書と題する書面および浅草税務署長作成の証明書(別紙(一)の<49>の事実につき)

(法令の適用)

被告会社の判事第一、第二の各所為は法人税法一六四条一項、一五九条に、被告人津山栄次郎、同津山昇の判示第一、第二の各所為はいずれも刑法六〇条、法人税法一五九条に各該当するところ、被告人両名につき所定刑中懲役刑を選択することとし、被告会社および被告人両名につき判示第一、第二の罪はいずれも刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法四八条二項により各罪の罰金の合算額の範囲内で罰金一、〇〇〇万円に処し、被告人両名については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした各刑期の範囲内で被告人両名をいずれも懲役八月に処し、なお本件は個人と法人組織とを明確に区分しないルーズな経理処理、および家具卸売業界におけるデパート等の大手販売店に販路を拡張または維持するための激しい競争に被告会社が打ち勝つための運動資金(裏資金)の必要等に基因するものであると認められるところ、本件摘発後、被告人らは深く反省し、従来の経理体制を改め、更正決定のあつた税額をほぼ完納し、デパート等に対する販路拡張方法もできるかぎり明朗な方法をとることを誓つている等の諸般の情状を考慮して、刑法二五条一項を適用し、両被告人に対しこの裁判の確定した日からいずれも二年間右刑の執行を猶予することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 安原浩)

別紙(一) 修正損益計算書

株式会社 津山製作所

自 昭和46年1月1日

至 昭和46年12月31日

<省略>

<省略>

別紙(二) 修正損益計算書

株式会社 津山製作所

自 昭和47年1月1日

至 昭和47年12月31日

<省略>

<省略>

別紙(三) 逋脱税額計算書

株式会社 津山製作所

自 昭和46年1月1日

至 昭和46年12月31日 事業年度分

自 昭和47年1月1日

至 昭和47年12月31日 事業年度分

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例